Expeditionary notes 〜INGE-GLAS を訪ねて③

 

 

工場見学はいよいよ佳境に入っていきました。
銀メッキが施され乾かされたオーナメントは、まるで整列して順番を待っているようです。ここから色付けに入ります。

まずは、ベースの色をつけます。
整列したオーナメント前には、オーナメントよりも少し大きな容器がありそこに塗料が入っています。ガラス管の部分を持ちひとつづつ容器に浸け、まんべんなく色が行き渡るようにぐるぐると回します。この段階でシルバーは見えなくなり、また乾燥させます。


その後、塗料の入ったスプレーを吹き付けながら色をつけていきます。特にモチーフのオーナメントはでこぼことした「みぞ」があるのでスプレーで細かいところまで色を入れることで輪郭がはっきりします。スプレーを使うことでなめらかなカラーグラデーションが完成します。


その後、筆を使って色をつけたり、模様を描いたり、文字を書いたり、、、。凹凸のあるモチーフや球体に、静かにゆっくりと筆を置きます。
細かい雪のラメパウダーをふりかける作業は、塗料が乾かないうちに行う時間との勝負です。絵を描き、粉をふり、また絵を描く、その繰り返しで仕上げていきます。


絵付けで最も難度が高いものは、人や動物の表情をつけることでしょう。特に瞳や眉毛などの細部はインゲグラス社の中でも資格を持ったペインターしか描くことはできません。筆の先を少しずつオーナメントに触れるように慎重に動かします。1つのオーナメントに筆を使って描く作業は最初から最後まで同じペインターが行い、個性ある表情が生まれます。
色付けの工程だけでも、作業が細分化され多くの職人が関わっている事がわかります。オーナメントを作る全ての工程で、それぞれの職人がそれぞれの現場でこだわりを持って作り上げ、やっとひとつのオーナメントが完成するのです。

その後、また乾かす工程に入ります。オーナメントによって回数は違いますが、色を変える度に乾燥させ、色の数以上に何度も何度も乾燥させていることを知りました。

 

無事に乾いたところで、オーナメントを形作るところから長くお付き合いしてきた口吹き用のガラス管を切り離します。
「スペシャルなナイフ(!)」とおっしゃっていましたが、カッターのような手のひらにおさまる小さな刃物でガラス管に線をいれ、折るようにして切り落としていきます。
これもまた熟練の技が光る工程です。繁忙期には、他の人もこの工程を手伝うことがあるそうなのですが、スピード且つ、切り口の美しさは担当の職人には敵わないんだと、言っていました。
切り落としたガラス管カチャンカチャンと音を立ててバケツの様な容器に落とされていきます。騒音の中、清らかなガラスがぶつかる音でした。これらの管は、またガラスとして再利用されます。美しい循環だなぁ、と実感します。



ようやくオーナメントのガラス部分が終了しました。完成まであと少し、おたのしみに。

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