Expeditionary notes 〜INGE-GLAS を訪ねて②〜

 

工場へ到着した私たち、というところまでが前回のお話でした。
さて、突然ですがここで問題です。
インゲグラスのオーナメントを完成させるまでにいくつの工程が必要だと思いますか?
オーナメントの種類にもよりますが、30から最大で60工程が必要です。

今回は吹きガラスの工程についてご紹介します。
インゲグラスの星型の冠がついている商品は、全て昔ながらの職人技によって手作業のブロウグラス(口吹き)の製法で作られています。ブロウグラス用のガラス管に熱したガラスを繋げ、炎の前で息を吹き込み膨らませて成形していきます。
自由に膨らませる丸いボールと、金型(かながた)の中にガラスを入れその型通りに成形するという2つの種類があります。
自由に膨らませるボールは、高度な技術が求められます。ガラスは想像以上に繊細で不安定。吹く息や温度が均一でなければボールは同じ大きさになりません。実は私、以前イタリアで吹きガラスに挑戦した事があるのでが、息の量も加減が難しく丸くすることもできませんでした。
インゲグラスのボールはもちろん、同じサイズでも厳密には同一ではありません。ですがそれもブロウグラスならではの表情であり、クリスマスツリーを彩るのです。

*2023年に使用される金型たち

もう一つの製法は金型に入れて作るオーナメント。クリスマスカンパニーではモチーフオーナメントと呼んでいます。こちらも同じようにブロウグラスですが、職人たちが古くから守ってきた金型にガラスを置き吹きながらその形に作り上げていきます。炎に入れ調整して一個につき30秒くらいで形成していきます。これはプロフェッショナルのタイムで、この水準に達するのは相当な時間を有します。


私たちが見学したときにも工場には研修生が作品を作っていました。研修生として労働しながら技を学び、それを職人がチェックして育てています。育成中は作ったものの半分は売り物にならず、工程を習得するまでに3年はかかるそうです。

どちらのオーナメントを作るにも、皆細心の注意を払って、息を吹き込んでいきます。
その後、手作業でオーナメントの内側に本物の純銀の溶液を吹き口から差し込んで入れます。

その後、お湯の入った大きなタンクの中にオーナメントを入れ、持ったまま泳がせながら、中の溶液を動かしコーティングしていきます。最後に表面を水で洗い、乾燥させます。簡単そうに見えますがとても高度な技術で、インゲグラス独自の輝きとなるシルバーの工程です。

工場は常に轟々と機械の音が鳴り響いていました。また特別な塗料を使用するため、耳や目の健康を損なう恐れがあるので、研修生はもちろん職人達もイヤホンをして、メガネやサングラスをかけていました。
過酷な状況の中、下積みを終え実力をつけて活躍する職人たちが、インゲグラスを支えています。

次回は、さらに職人技が光る絵付けから完成までのお話をしたいと思います。

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