Christmas Company collaborated with Raymond Savignac ⅲ
絵が完成したとの報告を受け、フランスへ到着したところまでが、前回のお話でした。
サヴィニャックの住む街、トゥルーヴィルへは車で向かいました。街が見えて来るとサヴィニャックが描いたカモメの旗が海風にはためいていました。それは、夢の国の入り口のように感じたのを覚えています。
自宅は、小高い丘にあるアパルトマン。
玄関で、色白のサヴィニャック夫人が茶目っ気たっぷりの少女のような笑顔で、私の頬をプニッとつまんで、くるくるとまわし、歓迎してくれました。私は、張り詰めていた感情が解けていくのがわかりました。
早速、二階のアトリエに通されます。やや気難しそうな表情のサヴィニャックがそこに座っていました。
アトリエには、彼が描いたであろうラフ画がそこらじゅうに散らばっており、それだけでも宝物の山に見えました。サヴィニャックの横には、白い布がかけられたイーゼルが置かれていました。
あの下にどんな絵があるのか、今までの期待と憧れと興奮で、胸の鼓動が高まっていました。
サヴィニャックが、白い布をサッと外すと、シルバーグレーの空に雲が浮かび、赤いサンタクロースがまるで空を踏みしめているように歩いています。
共に来ていた夫が「わぁ!!!ブラボー!!」と歓声をあげ、拍手をします。それにつられたかのように、皆、笑顔になり一緒に拍手をしました。
サヴィニャックの方を見ると、もう気難しい顔はなく「ニヤリ」としたチャーミングな笑顔になっていました。
みんなで喜んでいるところで、ふと気になってしまったことがあり、私は咄嗟に口走ります。
「私のお店はクリスマスカンパニーでTheは付いていないんだけど、、、」
サヴィニャックは「Theを取ったら、僕は世界のクリスマスカンパニーに絵を描いた事になる。貴女のクリスマスカンパニーに描いたんだから、これは外せないよ」
彼の説明にストンと納得して、彼の画家としてのこだわりを感じ受け入れることができました。
興奮冷めやらぬ私は、サヴィニャックに2つのお願いをします。
1つ目は「もっと絵を描いて欲しい!」その言葉に、彼は少し呆れ顔で「今度は何を描くんだい?」
「私は、フォーシーズンのサンタクロースが見てみたい!次はあなたの思い描く夏のサンタクロースを描いて欲しい。」というものでした。サヴィニャックは「え、またサンタクロースを描くのか?」と言いましたが、気長に待っておいでと引き受けてくれました。
続けて「この絵を使って何かグッズを作ってもいい?」と2つ目のお願いをします。
すると「もちろんだよ。これはもう君の絵なんだから、好きにしなさい。もしもリトグラフを作るなら、パリのムルロー工房に行きなさい」
ムルロー工房はパリにある1852年創業の由緒ある版画工房で、ピカソをはじめ、マティス、ミロ、サヴィニャックの師でもあるカッサンドルなど多くの有名画家たちが職人の技を信頼し、次々と世界的な名作を生み出した石版印刷所です。
サヴィニャックは、ムルローへ直接連絡をとり、紙や色の指定を全て指示を出し打ち合わせをしてくれました。(ムルローで体験した、楽しいお話もあるのですが、それは別の機会に、、)
こうして、クリスマスカンパニーの1作目のポスターは誕生しました。
小さな日本のクリスマス専門店のために絵を描いてもらえたのは、携わってくれたみんなの想いで実現しました。感謝してもしきれません。
そして、リトグラフや商品を通して、クリスマスカンパニーのサンタクロースを愛してくださる方々と出会えることは、サヴィニャックからいただいたギフトだと思っています。
これからも大切に守り続けていきたいと思います。
サヴニャックについて、たくさんお話ししたいエピソードや2作目の話もありますが
それは、またの機会に…。